2010-06-15

「友愛」の真意

祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印|この一年の注目記事|新しい日本を創る提言誌 Voice+ ボイスプラス

p.236 参考文献一覧にて目に止まったので、読んでみた。鳩山元首相のコラム。これを読んでようやく(今更)、鳩山政権の数々の発言の根底にある価値観が理解できた気がする。


この人はやっぱり、スポークスマンとして致命的なボキャブラリ不足というか、一般人との語嚢の乖離があったんだと思う。もっともソレこそが政治家に求められる資質だと思うので、政策家としてはともかく政治家としては落第だったことは変わりないと思うけれど。

ちょっと上から目線で語らせてもらうと、自分は特にIT系の話を人にする時は、その時の面子のITリテラシーを考慮したうえで、「より大勢」に伝わり易いと思われる表現を採る事がある。例えば専門用語なら1単語で伝わる内容を、ちょっと長くなっても敢えて回りくどい一般的な単語のみで表現しようとする。

そういう会話では、その為に物凄いエネルギーを費やして、二手三手先まで先回りしながら頭をフル回転させて話をしている。自分では表現を平易に崩しているつもりでも、なお伝わらない事まで考慮しながら相手の反応をうかがって話している。

にも掛からず、そういったこちらの努力も目的も読めていないKYに、「それって○○だろ?」としたり顔で専門用語を披露される事がある。知ってるよ!俺「は」!。だからといってその単語を今 振りかざしたところで何人にこちらの本意が伝わるというのか、を考えてから発言して欲しい。

その時点で話の腰も折れるし、こちらの貯めていたエネルギーもあらぬ方向に発散されるし、別の怒りに視点がそれて、話は完全に中断する。文脈を読め、というか簡単に言うとTPOを考慮しろ、と言いたくなる。鳩山元首相の会見におけるマスコミと同様に。

ただ、そういった一部の心無い聞き手の問題とは別に、伝えたい聴衆と本人との語嚢の乖離という問題もある。例えば最近の自分の身近な話で言うと、

「外字」を実装するために画像のバイナリを「Base64エンコード」して「データスキーム」で埋め込むと、メール中に好きな画像を埋め込めるよね。

という話は、括弧内の「外字」「Base64エンコード」「データスキーム」という単語を平易に説明する努力よりも、伝えたい集合により普及している「デコメ」という単語をこちらが知っていれば、一語で解決した。

ローカルな特定の集団においてのみ意思疎通を円滑にするのが「専門用語」なら「デコメ」も専門用語といえる。通用する母集団は10~20代のガラケーユーザーだ。

要するに鳩山元首相は、自分が本当に語りかけたい母集団に対してリーチする「専門用語」を知らなかった事が敗因だったのだと思う。

学者として自分が知っている「(学者用)専門用語」を用いない平易な表現を、発言を求められた時点で急ぎあてがった結果が「いのちを守りたい」とか「ゆらぎ」とか「行き過ぎた市場原理主義」とかの表現に繋がったのだと思う。

その結果、リーチしたい母集団はおろか、元々自分が在席していた専門分野にすら伝わらない。結局は鳩山元首相の基礎知識から目的までを全て理解してくれている身内、つまり文脈の全体を把握している人だけが納得する、という事態に陥ってしまったのではないだろうか。

もしそうだったのなら、鳩山元首相は参謀とか企画立案などの裏方に専念し、その意図する所を、時に善意の嘘で隠し、時に「(一般人向け)専門用語」を用いて、説得力をもって広く国民に「翻訳」できるカリスマをリーダーに据えるべきだったのではと思う。

そんな話は別にして、「博愛」を勝手に「友愛」と呼んで、真意が伝わらないま使い続ける「オレ用語」は非常に中二病くさい。

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