2010-09-21

インフレターゲットは冷房

インフレ率を「引き上げる」政策としてインフレターゲットが語られますが、あれは引き上げるのではなく、頭を抑えるもの、つまり気温上昇時における冷房なのではないかと思います

冷房(または暖房)は、設定された温度に室温を調整するものではありません。設定された温度以上(または以下)にならない様に、室温を抑制するものです。

室温が30、31、32度と上昇していく中で、設定温度を30度にすると30度を「上回った時」のみ、30度を遥かに下回る冷風を散布する事で、一時的に30度以下にさげます。そこで一時運転を停止すると、またすぐに30度を超えるので、30度を下回る冷風を散布します。これの繰り返しです。

設定が30度だからといって、30度の風を散布する訳ではありません。

もし、30度を超える夏日に、「暖房」を20度に設定して稼働したところで、暖房は室温を20度に引き下げたりはしません。暖房の役目は20度を「下回った時」に20度以上に引き上げる機能しかありません。20度を超えている場合、「なにもしない」以上の事はできません。

インフレターゲットはインフレ率が3、4、5%と上昇していく際に、ハイパーインフレが起きない様に、金利の引上げなどで金融の引き締めを行う物だと認識しています。だとするなら、インフレターゲットはインフレ率が「放っておいても上昇する」場面において、上昇を抑制する冷房的な機能しかないと考えるの妥当ではないでしょうか。

「放っておいても下降する」デフレ場面において、インフレターゲットを用いるのは、冬に冷房を用いるような物です。氷点下の厳冬期に、冷房を28度に設定しても、冷房は「なにもしない」以上の事はできません。

日銀はインフレ率の上昇が望まれる状況で、むしろ「デフレターゲット」ともとれる政策を行っている、という批判も最近見かけますが、もし今の日本が放っておいても下がる「冬」つまりデフレ期なら、暖房にあたるデフレターゲットを用いるのはむしろ真っ当な対策に思えます。

問題は金利引上げによるインフレ抑制は事実上無限に上げられるのに反して、金利低下によるデフレ抑制は0%以下にできない事ではないでしょうか。デフレターゲット、つまり暖房の性能が限定的なのが、現在の中央銀行による金融政策の限界なのではないかと思います。

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