2011-09-26

「投資の科学」(マイケル・J・モーブッシン著、川口有一郎監訳)

監訳者のあとがきにある通り、原著の直訳「ここにあなたが学ぶべきものがある」、サブタイトルの直訳「意外なところでファイナンスや投資の知恵に出会う」という説明が、本書の内容をそのまま表していると思います。

最近では私でも耳にするような、浸透しつつある新しい常識、市場の値動きが正規分布に従わないだとか、非合理な個人の集合が合理的な結果を出すだとか、現在の経済学では結果の説明は出来ても原因との因果関係は解明出来ていない物がある(その方が多い)などの話を裏付ける様々な他分野の研究を引き合いに、色々な投資・経済ネタが短いエッセー集の形でまとめられています。

ただし、各エッセーは現象2:説明7:応用(結論)1程度の割合で、説明に重きを置き、これに対してこういう対応を取れば上手く行く、と言った手軽な解決策は示されていません。そもそも現時点で解決策などない、という結論も多く示されます。

「ここにあなたが学ぶべきものがある」というタイトル通り、現在では原因のよくわからないが、認識だけされている事象があり、それについてこんな研究がされている、という情報がちりばめられているので、それを自身の投資活動に結びつけるには各人で本書の内容を「きっかけ」に掘り下げる必要があります。

全く知らない話もあるでしょうし、知ってはいたけど関連する法則や理論は初めて聞いたといった話もあると思います。日々マーケットに翻弄される投資家がたまに引っ張りだして、読み返してみて、気が向いたら掘り下げてみる、そんな手探りのネタを広げるきっかけになりそうな本です。

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